第3話
『パターン青』の表示にカガは一瞬、思考が停止した。使徒が出現した際のシュミレーションは何度もEVの搭乗者になってから、訓練として行ってきた。
しかし実際に使徒が現れることは人類の歴史でサードインパクト以降はなく、アダムが消えてからは、創造されることもないと考えられていた。
だからカガもどういうことなのか、最初は戸惑った。
けれど使徒は容赦してくれないし、時間を与えてもくれなかった。全面スクリーンの無数のマーカーは高速でEV0045型にせまりつつある。
亜光速での戦闘マニュアルは存在せず、カガは自ら考えるしかなかった。と言っても選択肢はたった1つ。戦うしかない。明らかに敵は攻撃態勢で向かってきている。
ホロスクリーンを指で操作し、艦載機の発進準備をする。
その最中、無数の光がマーカーと重なったところできらめき、全長5キロのEVが大きく揺れた。
ATフィールドでEV自体に損傷はないが、警告表示がホログラムで彼の前に現れた。敵の攻撃は予想以上にATフィールドを消耗したらしい。
次は防げない。心の中でつぶやいたカガは、艦載機の発進をすすめる。
空母型EV0045にはその腹部に500万体以上のEVコード4を格納しており、腹部の発射扉が開くと、それは蜘蛛の子が散るように、宇宙へ飛び去った。
丸と筒を組み合わせたようなその形状は、ネルフがヴィレと対立していた時代に開発したEV量産機である。
敵を自動認識してアームとATフィールドを使い自立して攻撃を行う。ネルフの忌むべき遺産が役立つ瞬間であった。
コード4の群れはカガの正面の無数のマーカーめがけ飛行する。敵は赤、味方は青のマーカーでスクリーンには示されていた。
使徒との接触を果たした宙域では、激しい戦闘が繰り広げられているのか、光が無数に見えた。
と思った矢先には亜光速の世界で戦闘で減速した使徒とコード4は消えていく。
カガはきっともう遭遇することはできないことを察した。
亜光速移動しながら戦えるコード4と使徒は、カガの周囲で戦闘を続けていた。
するとカガの眼にはっきり使徒の姿が確認できた。それは結晶体が流動しまた結晶に戻る、という動きを繰り返し、成分が陽電子の光を放射する形状をしていた。
「これが使徒!」
カガは低い声で呟くと、EV0045の速度をさらに上げた。シンクロ率を上昇させ、ATフィールドも拡大していく。
そして鮮やかに光るATフィールドが球状に広がった時、使徒は尽く爆発して宇宙に消えていった。
カガは生き残ったコード4を格納しつつ、周囲を警戒した。
使徒がどこから現れたのかも同時に調べた。
ホロスクリーンを指先で操作していると、進行方向にある恒星系にパターンのシグナルが出た。
まさかここが信号の発信元?
カガはすぐにLCL冷凍睡眠覚醒プロセスを開始した。恒星系へ向かい、その惑星に接近することを決めたのである。
第4話へ続く
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